AI智能总结
中塚伸幸 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 執行役員 調査部長 2 1 11 月に行われる米国の大統領選挙は現職のバイデン大統領と返り咲きを狙うトランプ前大統領の再戦となる見込みである。両者とも予備選ですでに候補指名に必要な代議員数を獲得しており、党大会での正式指名が確実になっている。 トランプが返り咲いた場合を展望する上で、まずは彼が政権にあった際の主要政策を振り返っておきたい。トランプ前政権の経済政策の柱は減税と対中関税である。減税については、2017 年 12 月 に 税 制 改 革 法 が 成 立 し、18年 1 月から連邦法人税率が 35%から 21%に引き下げられた。これはレーガン政権時代に税率を 46%から 34%に引き下げて以来の大幅な減税であった。また、企業の海外留保利益を還流させて国内投資に向ける狙いから、海外子会社からの配当を非課税としたほか、海外 に 留 保 す る 利 益 の う ち 現 金 で の 保 有 分 に15.5%、固定資産など現金以外での保有分には8%、それぞれ課税することとした。さらに、企業の設備投資に対しても 5 年間の時限措置として即時償却を認め、投資を促した。一方、個人についても 2025 年までの時限措置として所得税の最高税率を 39.6%から 37%に引き下げ、基礎控除の額を単身は 1 万 2,000 ドル、世帯は 2 万 4,000 ドルといずれも約 2 倍に増額した。 バイデンは 81 歳、トランプは 77 歳であり、世論調査では国民の 6 割が「二人とも高齢すぎて望ましくない」と回答している。バイデンは史上最高齢の現職大統領であるが、4 歳下のトランプも 3 代前のブッシュ大統領と同い年と、世代交代の遅滞感は否めない。バイデン大統領の支持率は 40%前後と低迷し、低空飛行だったトランプの現職時の水準とさして変わらない。つまり今回の選挙は国民から必ずしも待望されているわけではない二人の対決の再現といえるが、とはいえ選挙の結果次第で米国の政策は大きく転換し得る。本稿では経済面に絞って、両者のこれまでの政策を振り返るとともに、再選された場合の方向性を展望する。 税を段階的に導入した。第 1 弾として 18 年 7月に産業機械など 340 億ドル相当に 25%、8月には第 2 弾として半導体など 160 億ドル相当に 25%、9 月には第 3 弾として家具、家電な ど 2,000 億 ド ル 相 当 に 10 %(19 年 5 月 に10%から 25%に引き上げ)、さらに第 4 弾として 19 年 9 月に衣料品など 1,100 億ドル相当に15%の関税賦課を実施した。中国側もこれらに対する報復として追加関税を課し、両者の関税合戦になった。その後、米中の協議を経て、第 4 弾のうちの一部は税率が引き下げられたが、それ以外についてはバイデン政権下の現在も存置されている。 すなわち、法人・個人の両方に対して大型の減税を実施したもので、一連の税制改革による減税額は 27 年までの 10 年間で約 1 兆 5,000億ドルと試算されている。こうした財政による刺激効果もあって景気は堅調に推移し、実質 GDP 成長率は 18 年が 3.0%、19 年が 2.5%の高い伸びとなった。ただし、拡張的な財政運営の結果、米国の財政赤字は 17 年の 0.7 兆ドルから 18 年には 0.8 兆ドル、19 年には 1 兆ドルにそれぞれ拡大し、GDP 比でも 17 年の3.4%から 18 年には 3.8%に、さらに 19 年には4.6%へと赤字幅が拡大した(図表 1)。もっとも、20 年にはコロナショックに対応する支援策として歳出が大幅に膨らんだため、財政赤字は 3.1 兆ドル、GDP 比 14.7%と桁違いに急増した。なお、17 年から 19 年は財政が拡張的ではあったものの、インフレ率は 2%程度で落ち着いていた。 トランプは対中国の貿易赤字の削減を第一目的として関税賦課という手段を用いたわけであるが、必ずしも意図した成果が得られたわけではない。対中国の貿易赤字は 19 年、20年にはいずれも前年比で縮小したが、コロナ禍後の 21 年、22 年には増加に転じている。また、米国の対中関税を踏まえて企業が輸出拠点をベトナム、メキシコなどに移転させたこともあり、これらの国との貿易赤字はむしろ拡大し、米国全体での貿易赤字額も減少していない(図表 2)。 関税では、特に中国に対する追加関税が特徴的である。トランプ政権はまず 18 年 3 月に中国、日本を含む複数国に対し、鉄鋼、アルミニウムの輸入に関わる制裁関税を発表したが、その後は、中国を狙い撃ちにした制裁関 では、経済の状況が「非常に良い」または「良い」と答えた人は全体の 26%に過ぎず、「悪い」と答えた人が 51%にのぼる。経済が「1 年前に比べて悪くなっていると思う」と答えた人も40%に達しており、「良くなった」は 23%、「ほぼ変わらず」が 36%となっている。 3 次にバイデン政権の 3 年間を振り返るが、まずもって足もとの米国経済はマクロデータからみれば非常に良好である。22 年以降の大幅な利上げにもかかわらず、23 年の実質成長率は 2.5%であり、特に年後半は 7-9 月期が前期比年率 4.9%、10-12 月期が同 3.4%と高い伸びとなった。コロナ禍での巨額の財政支援の余韻もあって個人消費が堅調を維持していることが景気のけん引力となっている。消費者物価上昇率も 22 年のピーク時には前年比 9%台であったが、その後は低下基調にあり、24年 3 月には 3.5%まで下がっている。 なぜバイデン政権の経済政策は評価が低いのか。大きな要因は、物価の上昇率は鈍化しているものの、生活必需品などの価格水準がコロナ前に比べて大きく上昇し、高止まりしていることであろう(図表 3)。このため肌感覚としてインフレの圧迫感が依然強いようである。ただ、上述のニューヨークタイムズとシエナ・カレッジの世論調査でも、経済が良くなっていると回答した人の比率は半年前の調査に比べると増加しており、今後、経済実態に対する正しい認識が広がってゆけば、政権への評価が改善する可能性はある。 そうした中で雇用も堅調である。失業率は 22年 2 月以降一貫して 3%台で安定し、非農業部門の雇用者数も直近 1-3 月は月平均 28 万人増と、好況の目安とされる月 20 万人を上回って増加している。バイデンは一般教書演説で「3 年間で 1,500 万人の雇用を創出した」と実績をアピールしたが、コロナ禍の落ち込み後の回復という特殊要因はあるものの、雇用が大きく増えたことは間違いない。賃金の伸びも堅調で、平均時給上昇率は前年比 4.1%と消費者物価上昇率を上回り、日本が理想とする姿がすでに実現されている。加えて株式市場も好調で、3 月にはダウ工業 30 種、S&P500、ナスダックの 3 指数がいずれも最高値を更新した。 バイデンが再選された場合は、基本的には現行の政策から大きな変更はなさそうだ。このうち通商政策は基本的にトランプ政権の政策を踏襲している。バイデンもトランプと同様に中国に対しては強硬であり、貿易に関しては保護主義的な姿勢を示している。上述の このように客観的にみれば経済はきわめて好調であり、本来なら現職大統領の選挙戦には強力な追い風になるはずである。しかし、バイデンにとって気の毒なことに、この点はほとんど評価されていない。ニューヨークタイムズとシエナ・カレッジが 2 月下旬に行った世論調査 とおり、対中関税も見直されていない。TPPに変わる新たな貿易枠組みの構築も期待されたが、22 年 5 月に米国主導で発足した IPEFは関税引き下げなどの貿易促進策を含んでおらず、迫力不足の感が強い。さらに、中国に対しては安全保障の観点も踏まえて先端半導体等の輸出を規制するなど、締め付けはトランプ政権以上に厳しくなっている。 体の 3 割程度であり、全体の平均関税率は 2%程度にすぎない。したがって、輸入全体に 10%の関税を賦課するとなればインパクトは大きい。相手国の報復も見込まれる。米シンクタンクのタックス ・ ファウンデーションは、この 10%の「ユニバーサル関税」が導入された場合、GDPを 0.7%ポイント押し下げ、約 50 万人の雇用が失われると試算している。 産業政策の強化もバイデン政権の特徴である。インフレ抑制法はその名称のイメージとは異なり、実態的には自国産業の優遇・育成を企図した法律であり、例えば EV 車購入の際の税優遇は北米で組み立てられた車に限られ、日本からの輸出車には適用されない。また、中国製バッテリーを搭載した EV も優遇対象にはならない。同じく産業支援のための法律である半導体・科学法では、半導体関連の米国内投資に多額の補助金を付与している。日本など同志国には一定の配慮はしているものの、バイデン政権の通商・産業政策には自国優先の側面がある点には留意しておく必要があろう。 さらにトランプは中国からの輸入に 60%の関税を賦課する案も示している。トランプが 18~ 19 年に中国に賦課した追加関税は、18 年の対中輸入総額約 5,400 億ドルのうちの 2,400 億ドル相当に 25%、1,100 億ドル相当に 10%であったから、すべての対中輸入に 60%となると、こちらも相当なマイナス影響が見込まれる。 すでに中国企業はトランプ政権時に賦課された関税を回避するため輸出拠点をメキシコなどにシフトさせているが、トランプはそうした地域からの中国製 EV の流入も見越して、メキシコからの中国製 EV の輸入には 100%の関税を課すとも表明している。また、中国に限らず他国が高率の関税を賦課する場合には、その国からの輸入に米国も同率の関税を課す案も示す。アジェンダ 47 という自身の政策案を示すサイトでトランプは「目には目を、関税には関税を」という修辞を用い、そうすることが「互恵的」なのだと主張している。 4 トランプ再選の場合を展望すると、政策は基本的に「アメリカ・ファースト」であり、貿易に関しても保護主義を前面に打ち出している。前回政権時の政策方針をさらにグレードアップさせる感が強い。 その他の税制に関しては、もう一段の法人減税を実施する方針を示しているものの、具体的な内容は明らかではない。25 年までの時限措置となっている個人所得税の減税についても、延長あるいはさらなる拡充を示唆している。いずれにせよ関税も減税もどちらもインフレを招く懸念が強く、この点、米国経済にとっての影響は大きい。 税に関しては、トランプは自身を「タリフマン」と称しており、引き続き関税を主要な政策手段として用いる意向であるが、まず、すべての輸入品に 10%の関税を賦課すると明言している。現状、米国の輸入のうち関税の賦課は全 業者数はコロナ前の水準を回復している。米国の 24 年 2 月時点の就業者は 1 億 6,100 万人で、19 年平均と比較すると 343 万人増加しているが、移民労働者の数もほぼ同数の 350 万人増加しており、移民の流入が就業者増に大きく寄与したことがわかる(図表 4)。在留資格を持たない不法移民も、数年かかるとされる難民申請を待つ間は就労することができ、重要な労働力となっている。したがってトランプが移民制限を強化した場合は、労働供給が失われ、賃金インフレを招来する可能性が高まる。 政策のもう一つの柱は移民の制限である。現状、メキシコ国境を超えての移民の流入が急増している。米議会予算局によれば、米国への移民流入は 2010 ~ 19 年には年平均 90 万人であったが、足もとで大きく増えており、22 年には 260 万人、23 年には 330 万人に達したと推定されている。在留資格を持たずに国境